プレストウィッツ氏の告白「震災でわかった日米の競争力格差」を考える

震災でわかった日米の競争力格差

Japan Rules Global Supply Chain

と言うタイトルで、NEWS WEEK日本版が2011年03月25日(金)16時44分付で記事を掲載していた。

記事を書いたのは米経済戦略研究所所長のクライド・V・プレストウィッツ氏。

クライド・V・プレストウィッツ氏と言えば、「日本の実力」や「日米逆転」を書いた、レーガン政権時代の商務省審議官。日米貿易交渉の現場に立ち合い、日米半導体協定の秘密覚書の存在を暴露した。ちなみに「日米逆転」はするなど、われわれが知り得なかった情報を大胆に披瀝した、いわば戦後40年の日米関係総決算の書。米上院の委員会でも“A great book”と絶賛された。

ちなみに「日米半導体協定」は
『1986年に日米間で締結された協定で,日本製半導体製品のダンピング輸出防止を骨子とする。1991年の改訂では日本市場における外国製半導体のシェアを20%以上に引き上げることを目標とする条項が付け加えられた。』というモノ。

その「日本の半導体輸出」を抑える役割だった人が、今その見方を変えている…という記事

見出しは

『日本製部品はさほど重要ではなくなったという見方と同様、経済競争でアメリカが日本に勝利したという見方も嘘だった』

氏はこう続ける。

『津波と原発事故が複合した日本の震災の深刻さが明らかになる中、90年代にアメリカが日本に経済的に勝利したという考えもまた、実際には神話に過ぎなかったことが明らかになりつつある』

90年代は日本のバブルがはじけ、日本経済が(後に)「失われた10年」「失われた20年」そしてさらに現代に至るも陥っている「不況」の始まった年代。あの時から(本当はそれ以前から)、日本経済の舵取りが上手く行かなくなっていて、アメリカがそんな圧力をかけて来なくても、「日本経済が自爆・自壊」を始めていた。

経済的に言えば、実はアメリカ経済における「貿易黒字」はアメリカ経済全体からみれば、それ程のモノではない。これは、わたしが言ってる事ではなく、P・クルーグマン教授が良く言ってること。

でも、あの時は「米国には敵が必要」だった。だから、対米貿易黒字が大きかった日本を叩いた。1980年代くらいから「ジャパン・バッシング」と言う言葉がちまたに溢れ始めたのではなかったか。確かにレーガン政権の頃は「ロン・ヤス関係」で、緊張は緩和方向にむかったけれども、その裏では「日米貿易摩擦」から「日米構造協議」そして「年次改革要望書」と言う米国側の強制力の強化によるものであったし、日本が先の見えない不況に陥り、GDPが中国に抜かれるや、今は「中国脅威論」へと方向性が変わった。

2010年、業績悪化で閉鎖されたGMの工場
部品がない 日本が止まると世界にこんな工場が増える(写真は2010年、業績悪化で閉鎖されたGMの工場) Rebecca Cook-Reuters

いったい米国内で何がおこっているのだろうか?

『ボルボは今週、日本製のナビゲーションとエアコンの在庫が10日分しか残っておらず、工場が操業停止になる可能性があることを明らかにした。ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、シボレーコロラドやGMCキャニオンを組み立てているルイジアナ州シェリーブポートの従業員数923人の工場を、日本製の部品が不足しているために閉鎖すると発表した』

『他の産業でも事情は同じだ。半導体を製造する設備の大半が日本だけで作られているか、または主として日本で作られている。半導体の回路を焼き付けるステッパーは、3分の2がニコンかキャノン製だ。携帯端末やラップトップパソコンに使われる樹脂「BTレジン」の約90%、世界のコンピューターチップに使われるシリコンウェハーの60%は、日本から輸入されている』

『日本の混乱が長引けば、アップルやヒューレット・パッカード(HP)は深刻な問題に直面しかねない。今まで誰も気にしたことがないような製品、例えば小型マイクやメッキ素材、高性能機械、電子ディスプレイ、それにゴルフクラブやボーイングの新型旅客機ドリームライナーの羽に使われる炭素繊維など、すべて日本だけで作られているか、または主に日本で作られている』

つまりは、今回の東日本大震災によって、日本製の半導体(シリコンウェハー)等の輸入がままならす、米国製造業が打撃を受けていると言う実態を告白している。

思い返せば、あの「湾岸戦争」の時も「日本の半導体チップが入らないので、米国のミサイルが不足」したのではなかったか?

さらにここに来て、プレストウィッツ氏は、

『アメリカが被災しても世界は困らない』

とまで言う。

『考えてみれば分かることだ。北米以外にある世界中の自動車工場で、アメリカ製の部品が不足して操業停止の危機に直面するところなどいくつあるというのか? もしシリコンバレーで地震が起きたとして、アップルはどれだけの危機に瀕するだろうか?』

『もしそうした事態になったらアップルは被害を受けるかもしれない。特にスティーブ・ジョブズがけがをしてしまったら、事態は深刻だ。しかしアメリカが被災しても、今回の日本の震災が世界の部品調達網に与えている影響には遠く及ばない』

『理由は簡単だ。インテルのチップなどいくつかの例外を除けば(ボーイングでさえ国内ではドリームライナーの30%しか製造していない)、アメリカはもう世界市場に向けてそれ程多くの製品を出荷していないからだ。』

さらに衝撃的とも言える次の告白。

『アメリカが表向きはサービスとハイテク経済の国だということはわかっている。だが実際は、アメリカの1500億ドルのサービス黒字は、6500億ドルの貿易赤字と比べれば極めて小さい。それどころか、ハイテク貿易の収支も実は1000億ドル以上の赤字だ。真実を言うと、世界の市場で競争力があるアメリカ製品などほとんどないのである』

まあ、これはこれで、少し自虐的すぎるような気がする。要は、現代は金融だけではなく、製造業などの実体経済もグローバル化していると言うことだと思う。ただ、経済の「比較優位の原則」から言えば、日本は製造業に比較優位性があり、米国は金融や超ハイテクそして農業に比較優があると言うことだと思う。

アメリカは、その最優秀の頭脳を「製造業」から「金融」へシフトしてきた。そして、「金融」と言う(ある意味「虚構」?)の世界が動かす経済規模は、実体経済の100倍以上の規模がある。だから、当然、実体経済では考えられないような「ぼろ儲け」がある。金融経済が1%程動いただけで、実体経済は「吹っ飛んで」しまう。

この「地道」ではない「金融経済」に、欧米は、特にアメリカは「最優秀の頭脳」を結集し、「金融工学」なる技術(錬金術?)を発達させた。

ただ、「美味しい話には落とし穴がある」と言う諺通り、ハイリターンの裏にはハイリスクがある。しかも、幾らリスクがあるとしても、現代の経済は「金融」を抜きには考えられない(と言うか「金融」が動かしている経済)であることも、もう厳然とした事実。

例えば、日本の経済を救おうと思えば「金融」の力を借りずにそれを成し遂げることは、「ラクダが針の穴を抜けるよりも難しい」だろう。日本ももう十分に「金融帝国」の仲間入りをしているのだ(というか、資本主義経済に取り込まれたら、もう「金融」から逃れる事はできないだろう)。

更にプレストウィッツ氏は次のようにも言う。

『結局1985年のプラザ合意で日本は劇的な円切り上げを容認することになり、円は最終的に対ドルで100%も上昇した。この円高と、91〜92年にかけての不動産と株式市場のバブル崩壊は、日本の成長の足かせとなり90年代の「失われた10年」を生み出した』

『その一方、アメリカは90年代に入りインフレなき高成長を謳歌した。日本の停滞とアメリカの繁栄を比較すると、いかにもアメリカは日本を打ち負かしたように見えた。アメリカ人は口々に、なんで日本に抜かれる心配などしたんだろうと言い合った』

『だがアメリカでもITバブルとサブプライム・バブルが崩壊してみると、90年代のアメリカの高成長もまた見かけ倒しだったことがはっきりした』

しかし、ITバブルは(日本でも起こった)兎も角として、「サブプライム問題」は、グリーンスパン(とその仲間たち)の確信犯だったと思う。経済の専門家が、ましてFRB議長が、ソレを予測できなかった-と言う事を信じろ、と言う方に無理があると思う。

結びの言葉はこうなっている。

『今、国際的な部品調達網に日本が与える影響の大きさをアメリカのそれと比較すれば、グローバル競争の本当の勝者はアメリカではなく、日本だったことは明らかだ』

そう「国際的な部品調達網」に関しては、かなりの部分でそうかも知れない(ただ、それも今は、むしろインドネシアやマレーシアや台湾等の東南アジアの技術国にシフトしてきていると思う)。でも、「グローバル競争の本当の勝者はアメリカではなく、日本だったことはあきらかだ」は明らかにリップ・サービスだと思う。或いは壊滅的な大災害を受けた国へのエールだろう。

日本は明らかに、短期的、中期的には衰退に向かうだろう。今だ、東日本が「どのような形で落ち着くのか」解らない現状で、将来予測は五里霧中だ。

ただ、日本人の一人として、「明治維新」「第二次世界大戦」から力を盛り返し、国家を復興・発展させてきた日本人の「底力」を信じたい。そして、長期的には日本は甦ると信じたい。

現在、最も日本が必要としているのは、本物の政治家、本物の人材とそれを機能させることのできる新しい「レジーム」だと思う。

(http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2011/03/post-2023.php?page=1 参)
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No title

初めまして。
 
 この記事には日本を油断させようとする、エズラ・ボーゲル本と同じ臭いがしますね。
記事を書いた記者も、本音では“アメリカ アズ ナンバーワン”と判ってますよ。

一寸、想起するだけでも米国が世界一の産業分野は未来型が多い。
① IT・・・・・・・・・・・・・未だ、MS,アマゾン、グーグルが世界の覇者ですしね。
②ハリウッド等コンテンツ産業・・・・ディズニーランドも、新興国の経済が伸びるにつれて、一国に一つくらい出来そう。
③化学・医薬・バイオ
④農業
⑤軍事・宇宙産業
⑥金融・保険
⑦巨大投資集団・・・・・・・・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイのような組織が日本には生れてない。
プロフィール

Yasutomo-Araki

Author:Yasutomo-Araki
現代の閉塞感のある世界がもう少しだけ住みやすくなれば良いなぁ、などと考えております。今の状況の延長線を自分たちの子供たちや孫たちへバトンを渡すのは余りにも無責任だと思っています。大学は工学系卒。国立K大学の経済学研究科大学院修士。博士課程考慮中…。この国の未来への良きシナリオを描きたいと思いトボトボと歩いてるって感じです。ただ最近は、当方の怠慢のせいでtwitterまとめ、或いは「忘備録」化してます…。しかし、同志さんたち大歓迎です。

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