オバマ大統領の『米医療保険制度改革法』は違憲?!

THE WALL STREET JOURNAL日本語版の記事に『米医療保険制度改革法、連邦地裁が違憲判決』と言う報道がされていた。

日本では「当たり前」の『国民皆医療保険制度』ですが、噂通り、アメリカ国民の『国民皆医療保険制度』への「反対意見」は根深いようです。

26州の知事さん(日本で言えば『首相』ですよね)が、同法に反対し、連邦地裁でも、

「国民に保険加入を義務付けた同法の条項は憲法に違反している」

と言う判断を示したと言うことです。フロリダ州では

「国民に医療保険の加入を義務付け、非加入者には罰金を科す条項は、憲法が定める通商条項に違反している」

と言う判決を下したようです。

「アメリカ憲法の“通商条項”って?」

アメリカ憲法修正第14条の

『いかなる州も、アメリカ合衆国の市民の特権あるいは免除権を制限する法を作り、あるいは強制してはならない。また、いかなる州も法の適正手続なしに個人の生命、自由あるいは財産を奪ってはならない。さらに、その管轄内にあるいかなる人に対しても法の平等保護を否定してはならない』

と言う規定の事かと思ったら、

『連邦政府は憲法で制限列挙された権限のみを行使し、その他の権限は州と国民に留保されている(第10修正)。これを「例挙権限の原理」という。しかし、連邦議会に各州間の通商を規制する権限を与える州際通商条項(1編8節3項)などを根拠にして、連邦政府の権限は拡大している』(以上 Wiki参)

ことのようです。つまりは1791年の修正第10条『州または人民に留保された権限』のことですね。そこには、次のように規定されています。

『この憲法によって合衆国に委ねられておらず、またそれによって州に禁じられていない権限は、それぞれの州または人民に留保されている。』

つまりは、「国民に医療保険の加入を義務付け、非加入者には罰金を科す」事は、この修正第10条の規定の範囲内であり、したがって『米医療保険制度改革法』は「違憲である」と言う事です。

ちょっと日本では考えられないですが、良く言えば『自助努力の国』。悪く言えば、

「貧乏人は医者にかからずに早く逝ってしまいなさい」

と言う、非常に『非人道的』なお国柄…これを『ドライ』と言うのでしょうか。

兎に角、「福祉国家では無い(前々から噂では聞いていましたけど…)」ですね。

そして、その『根っ子』にあるのは『人種差別』です。これはP・クルーグマン教授がその著書『格差はつくられる』の中で再三、書かれていることです。少し長いですが引用させていただきます。

『…。それはトルーマン大統領がニューデイールを完成させようとした際に明らかになった。大統領はアメリカの制度を西ヨーロッパ諸国やカナダに比肩する充実した福祉国家へと発展させようとしたのである。つまり、国民健康保険を実施しようとしたのだ。
 一九四六年に提案されたトルーマン大統領の国民健康保険制度が創設されていたなら、それは今日のカナダの制度に匹敵する単一支払制度となっていたはずである。当初、それを議会に通すことは可能に思え、事実、今日よりも一九四〇年代に国民健康保険制度を創設するほうが簡単であったろう。一九四六年、医療保険費の総額は、GDPのたった四.一パーセントだったが、今日、それはGDPの一六パーセント以上に跳ね上がっている。また、四〇年代、民間の医療保険はまだ比較的未成熟な業界であったため、現在ほど利益団体として力を持ってはいなかった。医薬品業界が強力なロビー活動を展開するのは、一九八〇年代になってからである。一九四六年当時、世論は政府による健康保険を強く支持していた。
 トルーマン大統領の計画は頓挫した。その責任は、大統領の計画に反対するために五〇〇万ドルを使ったアメリカ医師会(AMA)によるところが大きい。その額は今日の経済規模に換算すると、約二億ドル相当である。医師会は国民健康保険の創設を阻止しようと、ホームドクターを動員して患者たちを説得させるなど、医師と患者の関係を露骨に悪用した。トルーマン案を支持した医師たちは医師会から追放され、病院での権限すら取り上げられそうになった。医師会は医師たちに「公営医療制度」の諸悪について患者たちに説明すべき事柄を強要したが、その内容は今日読んでもショッキングである。
 だが、医師会だけがトルーマンの計画を潰したわけではない。南部州の民主党員からも国民健康保険に対し猛烈な反対があった。多くの人々が適切な医療保険を負担できずにいた貧しい南部州にとって、国民健康保険は経済的な棚ぼたであったはずなのだが、南部州の政治家たちは、それは病院での人種隔離をなくすものだ思い込んだのである(彼らはたぶん正しかったろう。メディケアは老齢者のためのもので一九六六年に実施されているが、それはトルーマン大統領が創設しようとしていたものと多くの点で似ていて、その実施の結果、アメリカ中の病院における人種差別廃止に繋がった)、つまり、南部州の政治家たちにとっては、貧しい白人に医療を提供するよりも、黒人を白人の病院に入れさせたくないことのほうが重要であったのである。』(『格差はつくられる』P・クルーグマン著 早川書房刊 P.53~) (下線は管理者)

より『露骨に』言えば、(貧しい白人もいたでしょうが)富裕層は白人だった。その白人は、『自分達のお金が、黒人(や有色人種)の医療のために(分配=富の分配)され、使われるのを非常に嫌がった』のです。

オバマ大統領と言う、黒人初の大統領が生まれましたが、根本の部分で(特に『保守主義者』は)今も嫌っていると言うことが解りますね。

さて、記事の全文ですが、次の通りです。


米医療保険制度改革法、連邦地裁が違憲判決
2011年 2月 1日 15:53 JST

 米国で昨年成立した医療保険制度改革法を巡る訴訟でフロリダ州連邦地裁は31日、国民に保険加入を義務付けた同法の条項は憲法に違反しているとして、同法全体を無効とする判断を示した。

 ロジャー・ビンソン判事の判決は、3200万人の医療保険への加入を目指すこの法律を執行するオバマ政権の権限に異議を唱えている。

 26州の司法長官と知事らで構成される原告団の弁護士は、これらの州では同法の執行が停止されなければならないと述べた。

 しかし、政府高官は「これまで通り法律を執行する」と述べ、オバマ政権が同法の執行を停止する計画がないことを明らかにした。政府を代表する司法省は、今回の地裁判決を不服として控訴する意向を示している。

 同法は昨年3月にオバマ大統領の署名により成立したが、今回の判決は最大の法的試練となった。原告の26州の知事らは大半が共和党員でこの法律の撤廃を目指している。 

 今回判決を下したフロリダ州ペンサコーラ連邦地裁のビンソン判事も共和党系だ。判決では、国民に医療保険の加入を義務付け、非加入者には罰金を科す条項は、憲法が定める通商条項に違反しているとしている。今回の違憲判決はこの種の4訴訟では2度目のものだが、法律全体を違憲だと判断しているため、前回バージニア州での判決よりも一歩踏み込んだものになっている。

 この種の訴訟ではこれまで判決が党派別で二分されている。民主党系の判事2人は同法を支持した半面、共和党系の2判事は違憲判決を示している。訴訟は最終的には最高裁で決着すると予想されている。』
( http://jp.wsj.com/US/Politics/node_178433 参)


繰り返しますが、かなり黒人(や有色人種)の『人権』は認められるようになりましたが、保守主義(特に『共和党』に多いでしょうね)者は、黒人大統領を頂いている今日でも、『ホワイト』と『カラード』を差別したいのでしょうね。そして、お金持ちの白人は、自分達の納める税金や健康保険料金が、『黒人(や有色人種)』のために使われるのは、堪らなく嫌なことなのでしょう。そして、その『負担』が「とてつもなく大きいものである」と勘違いしているようです。

クルーグマン教授の同書の『第11章 緊急を要する医療保険問題』では、そん『誤解』を解くために一章を割かれています。アメリカよりもGDPが余程低い国々でさえ、『医療保険制度』を整え、国民(のほぼ全員が)、一般レベルの医療を受ける事が可能になっています。アメリカのGDPは世界第一位ですが、

『世界保健機構(WHO)によると、アメリカの医療保険の充実度は世界で三七位』(前掲書 p.161)

です。更に、

『アメリカはカナダ、フランス、ドイツと比べて一人当たりの医療保険額は約二倍、イギリスのおよそ二倍半でありながら、アメリカ人の平均寿命は最下位である』(前掲書 p.160)

これを、さらに『経済的』に見れば、費用対効果がカナダ、フランス、ドイツの約半分以下、イギリスの四〇パーセント以下と言う非常に非効率的なシステムになっている。

経済学では、様々な要素が絡んでくるので、『正解』がない世界ともいえますが、それでも、『基本原理』の方向へと収束しようとする圧力があります。

『人権』に最も敏感なはずの米国のタブーの部分ですが、このような『非効率なシステム』が何時までも(例え強力な反対勢力があっても)継続・維持が可能だとは思われません。

しかし、アメリカの『保守主義者』の人たちは頑張りますね~。

かれらの教え(キリスト教)では受け入れ難いでしょうけど(『神は人間を地上の支配者として創造された』のですよね)、ブッダの教えをここに書かせていただきます。

『生けとし生けるものは、全て平等である』

そして、これこそ『合理的な思考』だと思います。
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現代の閉塞感のある世界がもう少しだけ住みやすくなれば良いなぁ、などと考えております。今の状況の延長線を自分たちの子供たちや孫たちへバトンを渡すのは余りにも無責任だと思っています。大学は工学系卒。国立K大学の経済学研究科大学院修士。博士課程考慮中…。この国の未来への良きシナリオを描きたいと思いトボトボと歩いてるって感じです。ただ最近は、当方の怠慢のせいでtwitterまとめ、或いは「忘備録」化してます…。しかし、同志さんたち大歓迎です。

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