『法人実効税率5%下げ=菅首相、財務相らに指示―財源は未決着』について考えること

今、個人的に『経済学』のお勉強をしております。『経済学』の読み物的な著作は、昔から結構興味があったので、時々読んでいましたが、改めて『経済学』の教科書を読むと、これが中々の難物と言うか、もう「凄く奥が深い」し、非常に難解です。で、ちょうど『公共経済学』の『税』のところをお勉強しているときに、民主党、菅政権は『国家成長戦略』の目玉として、『法人税の5%減税』を打ち出してきましたので、少し(聞きかじり?)『経済学』の立場からその効果について、少し考えてみたいと思います。

朝日新聞電子版の報道によれば、その『減税政策』は次のように報じられて居ます。

法人実効税率5%下げ=菅首相、財務相らに指示―財源は未決着
2010年12月14日1時6分

 菅直人首相は13日夜、首相公邸で野田佳彦財務相、玄葉光一郎国家戦略担当相と会談し、2011年度税制改正で焦点となっている法人税減税について、国・地方税を合わせた「法人実効税率」を5%引き下げるよう指示した。新成長戦略を軸とする需要と雇用拡大に向け、企業の税負担を実質的に軽減する「実質減税」を実現する。

 政府税制調査会は減税による減収額1兆数千億円を補う財源として、租税特別措置廃止に加え、所得控除や証券優遇税制の見直しなどを想定しているが、まだ決着していない。今後、詳細を詰めるが、現段階で5000億円規模の実質減税となる見通しだ。

 菅首相は13日夜、記者団に「企業が海外に出て雇用が失われると経済にとってもプラスにならない。経済界には国内投資、雇用拡大、デフレ脱却の方向に積極的に使ってほしい」と強調した。

 法人税減税の結論が出たことで、税制改正大綱は大筋固まった。政府としては16日に閣議決定したい考えだ。

 法人減税をめぐり、税調は片山善博総務相、海江田万里経済財政担当相も加えた4閣僚会合を連日開催。しかし、財源確保策や下げ幅をめぐり、主に野田財務相と玄葉国家戦略相の意見が対立していた。 
[時事通信社] 』
(http://www.asahi.com/politics/jiji/JJT201012130119.html 参)

ところで、前もってお断りしておかなければならないのは、『経済学』の中でも『税制』は非常に難しい問題です。そしてわたしは「独学の初学者」です。

『税制』の問題は、ノーベル賞級の(本物の)経済学者さんたちの間でも、「議論が絶えない」問題です。

以前のわたしだったら、菅政権の『法人税5%減税』に単純に賛成していたかも知れません。ただ、少し『経済』をかじってみると、それはそう単純に「良い政策」とは言えないです。増して、今回の減税分の「財源が確定できていない」更に「個人の相続税枠の40%カット」とか「租税特別措置廃止に加え、所得控除や証券優遇税制の見直しなど」とかと言った形での『財源確保』がくっついてくるとなると、益々、『法人税5%減税』に「賛成」とは言い難くなってきます。

まず、政府の目論見通り、

『新成長戦略を軸とする需要と雇用拡大』

に、減税された「お金」が回るのかと言うのは非常に疑問です。スティグリッツ教授の教科書によれば、

『法人所得税の理論的根拠は、決して完全に明らかになっていない。ある者は、法人企業も個人と同じように税金を支払うべきである、と考えている。しかしほとんどの経済学者はこの議論は説得的でないという。その理由は、税金を払うのは、法人企業ではなく人間であり、具体的には、その企業で働く人、それに資本を供給している人、そしてその企業によって生産される財を購入する人だからである。』(『スティグリッツ公共経済学 第2版 下』J・E・スティグリッツ著 東洋経済新報社 P.863)(下線は管理者)

つまりは、『税の帰着』の問題で、結局『法人税減税』の恩恵を受けるのは企業の『労働者』であり、『株主』であり『消費者』であるという事になります。

まず『労働者』を考えると、単純に考えると「賃金が少し増えるかも知れない」。ですが、少し位、賃金が増えたからと言って、それが消費に回る(需要の拡大)に回るとは考えにくい。

同じく『労働者』としての『経営者』(オーナー経営者では無く雇われ経営者)。彼は果たして少し減税の恩恵を受けるからと言って『雇用』を増やすかと言えば、それよりは現状の景気では『社内留保金』を選択する可能性が高い。彼も同じく、自らの賃金を少しだけ上げるかも知れないけれども、それは消費に回るかもしれないけれども、『貯蓄』に回るかも知れない。

それから『消費者』。確かに少しだけ安くなった商品は、少しだけ『魅力』のある商品にうつるかも知れませんから、消費に回るかもしれない。けれども、現状の景気から考えれば「消費の手控え」が解消される程の効果があるとも思えない。

そして、『法人税』が諸外国並になったから『外資』が入ってくるか。確かに、「今までより企業負担が減ったのだから、投資対象としての魅力は少しは上がったかもしれませんから『外資』が流れてくるかも知れない。しかし、それよりも、「日本国内の需要が伸びない以上は、それ程『魅力的』な投資対象だとは思えないかも知れない。むしろ、国際比較しれば、やはり成長率が高く、『株価』が上がり続けている『中国』を始めとする国々の方が投資対象として魅力的に見えるかも知れない。

それに民間の『投資』への期待をされているようですが、今でさえ、GDPギャップが大きすぎるのに、そこに更に『投資』は行われない可能性のほうが高い。「造っても売れない」のですから、企業は『設備投資』も『雇用』も必要が無い。

更に、財源確保のために行われる『個人負担の増税』は、国内の消費マインドを更に冷え込ませるかも知れない。ただ、『相続控除の40%カット』は、個人の『貯蓄性向』を下げ、消費に向かわせるかも知れない。ただ、同時に、企業(特に中小のオーナー経営会社)は、オーナーの持ち出し金にも、また企業を子供に譲る時にも今までよりも多くの『相続税』を払わなくてはならなくなるため、『倒産』が増えるかも知れない。

実は、日本の製造業を支えているのは『中小企業』とその高い技術力ですから、場合によっては、政権の当初の目的である『新成長戦略を軸とする需要と雇用拡大』とは全く正反対の効果を及ぼしてしまうかも知れません。

『実際上、法人化の利点は非常に大きいため、税金は法人化を抑制するうえで大きな効果を持たないかもしれない』とスティグリッツ教授の教科書にも書かれています(同上書 P.863)

『法人税減税』が悪い税制改革だとは思いませんが、財源確保の方法が問題を作り出しそうな気がします。

今、日本経済の問題は『GDPギャップ』が埋まらないことだと思います。製造能力は余っているのに、モノを造っても売れない。長すぎる不景気で、消費者の『消費マインド』が冷え込んでしまっている。更にはリストラ、派遣、アルバイト、フリーターなどで消費者の『購買力』もなくなってしまっている。

それは単純化して言えば『市中にマネーが不足』している状態。だから『円』が不足し、さらに経済危機で、ゼロ金利或いはそれに近い金利を取っているために、(今は切断されている)キャリートレードによって『円』の需要が高まり『円高』になって、『輸出産業』は国際競争力を失った。だから、『日銀』は実行するのが嫌さに「出来ない」と言い続けている『インフレターゲット』を設けた『緩やかなインフレ』を作り出すべきだと言われる。

この深刻な『不況』を脱するためには大胆な『金融政策』と『財政政策』が必要だろうし、実際政府は行っている。ただ、例えばP・クルーグマン教授流に言えば、
「規模が小さい。」
という事になるのかも知れない。それに、経済は複雑に絡み合った『多体問題』なので、『目的』を『相殺』するものに政策実施をしてしまっているかも知れない。

『日銀』は紙幣を刷って、市中の通貨量を増やすべきだと思う。もちろん『慎重さ』も必要で、「オーバーヒート」したら冷却(金利を上げて、今度は「市中のマネー」を減少させる)しなければならない。しかし、少なくとも年2~3%位のインフレは必要だろうと思う。なにしろ随分と長く続いている『デフレ』なのだから、その退治には少々の荒療治が必要だろう。

そういう「経済の下降局面」に慣れてしまっている(「仕方が無い」と諦めている?)、状態が一番問題だろう。この『異常な閉塞感』の状況は国民にとっては良く無い状況であることは誰もが(一部の富裕層を除いて?)感じるところだろう。

兎に角、

「法人税を5%下げれば、国内投資、雇用拡大、デフレ脱却ができる」

と言うのは、少し短絡的で、その『財源』(しかも5%減税分の内の3%分しかまだ「方向性」さえ見いだせていない)の賄い方にも問題がありそうなので(そもそも、『税』は『一括税=ランプサム税』以外は『経済』に『歪』を作り出すので、余程注意して『税制設計』をおこなわなくてはなりません)、繰り返しになりますが、反対の効果になる可能性もあります。
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No title

メリークリスマス!
お久しぶりでございます。
私も今回の「法人実効税率5%下げ」は、よくよく聞いてみると、?を感じます。

消費税は上げてもいいから、サラリーマンなど、はっきりくっきりとっているところを減税してくれたらいいのになあ・・・というのが私の希望です。これも短絡的な考えかもしれませんね。

No title

お久しぶりです&(遅れちゃいましたけど)メリークリスマス!
今、経済学を詰め込んでいるのですけど、なんか『脳みそ』が疲労状態です^^;

確かに現状の日本の「法人税率」は先進諸外国に比べて高めなので、5%下げると、先進国並みにはなります。が、その『効果』は、政府が目論んでいる『結果』になると言うのは、とても楽観的だと思います。「法人税率」を諸外国に比べてもの凄く低くすれば、外資が入って来る「可能性」は上がると思いますが、結局は、外資が日本に「資本を注入する『魅力=儲かる』があるかどうかですね。今の日本ではむしろ日本の資本が外国にその『市場』を求めて出て行ってる状況ですからね。

Muuさんの「ご意見」の方が、実は経済学的にも合理的だと思います。消費税は皆嫌いますけど、それ程、悪い税制ではないです。死重損失(税を集税するための無駄)も、比較的軽いですし、これに、「生活上補助しなければならない家庭に対する補助金・援助金・支援金」などを組み合わせた方が良いでしょうね。そして『所得税』は減税する。ただ、これをすると、その死重損失は増えますから、いかにそれを『簡素化』するかは考えなければならないでしょうけど。

まだまだ『初学者』なので、今もお勉強中で、頭の中がこんがらがった状態ですので…本当に、経済が解っている人に、色々と御教授願いたいです。
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Yasutomo-Araki

Author:Yasutomo-Araki
現代の閉塞感のある世界がもう少しだけ住みやすくなれば良いなぁ、などと考えております。今の状況の延長線を自分たちの子供たちや孫たちへバトンを渡すのは余りにも無責任だと思っています。大学は工学系卒。国立K大学の経済学研究科大学院修士。博士課程考慮中…。この国の未来への良きシナリオを描きたいと思いトボトボと歩いてるって感じです。ただ最近は、当方の怠慢のせいでtwitterまとめ、或いは「忘備録」化してます…。しかし、同志さんたち大歓迎です。

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