果たして『最適な政策』とは、どのような政策なのだろうか…?

「国と地方の財政と政策形成過程」について考えてる。

果たして『最適な政策』とは、どのような政策なのだろうか…?

前回のエントリでも少し触れた…けどね。

「そんなモノ、解る訳ないだろ!」

う~ん、非常に正直な「意見」ですね。だって「そんなモノ」が解ってりゃ、誰でも(どこの国でも)、『最適政策』に収斂していきますよね…

でも、「本当にそうでしょうか?」

ってのは、結局「政策」って、その国(国民)の「文化」「歴史」「統治機構」「国民性」等々によって「異なったモノ」になりますよね。

だから、「国によって最適な政策は異なる」ってのが常識的な答えになるのかも知れないですね。

つまりは、政策形成は多分に「政治的問題」である…のであって、その国の「政治構造」(議員さんの「質」とか、役人の「質」とか…もっとはっきりと言ってしまえば「その国の国民の質」によって変わるモノだろうと言えると思います。

ところで、「経済学」では面白い(って、お勉強してるわたしが言うのも変かもしれませんが…)考え方をしたりします。

ケネス・アローが提示した「アローの定理」ってのがそれ。

これを言い換えると、

全員一致でなければ、誰かの「効用は低下」するので、「民主主義的な政策」は殆ど存在しない…と言うことになります。

「えっ、民主主義って多数決じゃなかったっけ?!」

って思いますよね。でも、経済学では「パレート効率」って考え方をするのです。それは「誰かの効用(満足度)を下げずに、他の誰かの効用を上げることが出来ない」状態…つまりは「資源を無駄なく最適に使ってるかどうか」を問題にするのです。だから、例えば資源が100あって、AさんとBさんが居る。この時、Aさんが100でBさんがゼロでも(極端な場合ですが)、「資源は無駄なく使われてる」から、パレート効率的な訳です。

ただ、これだけを持って「経済学」はだから……みたいな考え方を持たれては困りますけどね…やはり「効率」と「公平」(これらはトレード・オフの関係があるのですけど)と言う観点から、ベンサム型の「功利主義」的な配分方法から、ロールズの「より恵まれないものに、再配分するのが良い」と言う社会正義の立場の配分方法、そして社会主義的な「全員が等しい」配分まで、その中で「パレート効率」を満たす配分(これを「エッジワース・ダイヤグラムボックス」上の「コントラクト・ライン」(契約曲線)と言いますが…興味のある方は「ミクロ経済学」の教科書などを読んで下さい)を「模索」(終わる事のない「議論」?)をしているのですから…

ところで、話を戻しますが、アローさんの「アローの定理」は、当然、学会を騒然とさせたとか…

アローさんは、自ら「これを『アローの定理』と言う」なんて言われていないのですが、誰かが名づけたのでしょうね。で、アローさんは3人の「選好(好み)」をモデルとして出されたそうですが、ここではもっと解りやすく、「5人だけど、選択肢が2つしか無い場合」を考えれば、直ぐに理解できると思います。

つまりAさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさんが居て、選挙があった…としましょうか。γさんとδさんが立候補しているとする。Aさんはγ>δという選好を持っていて、そう選択する。Bさん、Cさん、EさんもAさんと同じ選好を持っててγさんを選ぶ。これでDさんも同じ選好なら、「全員一致でγさんが選出」されるし、だれの「選好」も反対されない…めでたしめでたし。

しかし、ここでDさんはγ<δという「選好」を持ってたとすると、

「Dさんの効用は低下」…つまり「パレート効率」ではない。

でも、これも「怖い考え方」なんですよね。つまりは、

「民主主義」において「パレート効率(最適)」が達成されると、それは、「全体主義」や「ファシズム」につながる恐れがある。

と言うことになるからです。

ところで、これが「公」部門の場合…「市場原理」は働いていないし、「選挙行動」(先ほどの『アロー効果』の場合のような「パレート効率」を考えずに「多数決」で良いのですけど…)

「一体、どのような『力学』で動いてるの?」

って事になりますよね。「誰が予算額を決めてるの?」「誰がどう言う政策に財政を使うのか決めるの?」「誰が、個別の事業の内容や費用を決定するの?」

主権者は「国民」。財政負担(税金)も「国民」。だけど、

「皆さん、自分が、あの空港や道路や橋や公園や(ついでに信号機も)…が必要だ」

って決めた覚えがありますか?
(まぁ、中に少数、そう言う方がいらっしゃるかも知れませんが…)

あれは「政府」や「役人」が「計画」して実施の決定をしてる(当たり前だけどね…)

じゃあ、そこに「国民のため」って言う視点が有るのか?

確かに「ある程度はある」と言う事は言えるけど、「完全に国民の利益なんて度外視」の場合も多々ありますよね。

民間の「市場原理」に代わるような「調整機能」は、しいて上げれば、

「選挙過程」「政党間の議論」「様々な圧力団体の圧力」等々…と言った所でしょうか。

勿論完全なものではないです。ここでの問題は、例えば(1)選挙に行く人と行かない人(の偏り) (2)資産のある(政治資金を提供できる)人の声が大きくなる (3)一票の格差問題 等々による「偏り」が考えられます。

でも一方、にも関わらず、「民主主義政体」を採用している国々の方が「生産性」が高い事は、データからも明らかです(参:松原望「社会を読み解く数学」ベレ出版 P.32-33)、そこに何らかの「効率を改善しようとするインセンテイヴ」や「厚生を大きくしようとするインセンテイヴ」が働いていることは否定できません。
(ここで面白いのは、「民主主義」の生産性は、まぁ、桁が違うのですけど、「非自由(独裁制)」と「半自由」なら、「非自由」の方が若干「生産性が高い」…でも、「非自由」や「半自由」社会って、マトモな統計データが出てると考えられないですけどね…)

ここで、取り上げたいのは、まずはKawachi et al.1997の論文(本文はPDFで http://ajph.aphapublications.org/doi/abs/10.2105/AJPH.87.9.1491 からダウンロード出来ますので、興味のある方はダウンして読んでみて下さい…但し、全文英文ですが…)

Kawachi et al.は「公衆衛生学者さん」なので、「貧富の差と罹患率、死亡率」の相関関係を研究されています。ここでは「ロビンフッド係数」と言う「ジニ係数の逆数」のような指標を使われてる(何でも、最初「ジニ係数」を使って統計解析すると、あまり有意な差が認められなかったとか…それは、彼らが調査したのが全米各州で、極端な差は元々見込まれにくいのは解っていた…それで、「ジニ係数」よりも感応性が高い「ロビンフッド係数」を使ったようです)。

ロビンフッド係数と言うのは「多くの他人は、機会があればあなたを騙そうとしているか、そうではないか」という「他人は信頼できるか?」って指標。で、Kawachi et al.の結論は、

「ロビンフッド係数と、罹患率、死亡率の間に有意な相関がある」

つまりは「正直な人々が多い(と人々が認識している)社会ほど、罹患率や死亡率が低い」と言うこと…。

Fig.1

(出所:Kawachi et al,.1997“Social Capital,Income Inequality,and Mortalitu”American Journal of Public Health)

上の図は、「格差」と「多くの他人は、機会があればあなたを騙そうとしているか、そうではないか」の相関図。これから更にKawachi et al.は分析を進め「正直な人々が多い(と人々が認識している)社会ほど、罹患率や死亡率が低い」と言うことを示す。

ここで、思いついたのが、「正直な人々が多い(と人々が認識している)社会」は、はたして「国際競争力」があるのだろうか?

と言うこと。ところがこの「国際競争力」と言うのが、「スイスのビジネススクールであるIMD(経営開発国際研究所)」と「世界経済フォーラム」が出してるんだけど、もうバラバラ。そう言えばクルークマン教授なんかは「ナンセンス」と言われている。で、一人当たりGDPとの相関を見ることにした。

果たして、世の中は『正直者が馬鹿を見る』世界なのか、それとも『正直は最善の策(Honesty is the best policy.)』であるのか?

OECD各国を中心として、「ジニ係数と一人当たりGDP」をプロットしたのが下の図。

一人当たりGDPとジニ係数
Fig.2 一人当たりGDPとジニ係数(出所:IMFホームページ、OECDホームページ 統計データより作成)

結論を言うと、『正直は最善の策(Honesty is the best policy.)』の方が正しい可能性が高い。

ここで言えそうな事を二点。

(1)ジニ計数が低い、つまりは所得格差の低い国ほど生産性が高い(その「相関係数」は-0.609237403で、かなりの相関があることを示している。

(2)つまりは「所得格差の低い国」程、「正直な人」が多く、「高い生産性を実現」していると言えそうである。これを敷衍して言えば「正直な(真面目な)政治家や役人が多い」国ほど、「効率的」であり「高い生産性を実現出来ている」と言えるかも知れない。

ただ、今回は単年度のデータから見たけど、もっと多年度で動学的に見た方が良いと思う。しかし、それにしても「データ自体が少ない」ね。日本は5年毎程度でしかとっていない! 特に、最近の変動は毎年度のが欲しいよね。

それから、特定の社会集団(「政治家」「官僚」「企業経営者」「労働者」を年齢別に等)に分けて同様に分析してみたいよね。そのようなデータは入手困難だろうね…それに「正直なデータ」なんて出てきそうにない(笑)

それでも、もしもそんな「分析」が出来たとしたら…色々と面白いとは思うけどね。


スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Yasutomo-Araki

Author:Yasutomo-Araki
現代の閉塞感のある世界がもう少しだけ住みやすくなれば良いなぁ、などと考えております。今の状況の延長線を自分たちの子供たちや孫たちへバトンを渡すのは余りにも無責任だと思っています。大学は工学系卒。国立K大学の経済学研究科大学院修士。博士課程考慮中…。この国の未来への良きシナリオを描きたいと思いトボトボと歩いてるって感じです。ただ最近は、当方の怠慢のせいでtwitterまとめ、或いは「忘備録」化してます…。しかし、同志さんたち大歓迎です。

なおこのブログではアフィリエイトプログラムを利用しておりますが、実際の商品の購入に関しましては、お客さまとリンク先のホームページ管理人とのお取引になります。お取引に関しまして、当ブログ、並びに管理人は一切の責任を負いかねますので、ご了承下さい。当該商品等のお問い合わせは、お取引先までご連絡下さい。

みんなのプロフィールSP

人気ブログランキングへ

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
最新記事
F2Cアフィリエイト
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
クロック
最新コメント
Flashリバーシ
時間があれば遊んでいってください
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
クリック募金
ワンクリックで救える命がある
リンク
RSSリンクの表示
FC2カウンター
メールフォーム
個人的に連絡したい時はこちらへ

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム
ブロとも募集中で~す!

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
検索フォーム