財政の持続可能性について

最近、「国家財政の破綻」が大きくとりあげられて来ている。
かっては「オオカミ少年扱い」だったけど、最近は「アメリカのサブプライム危機」「リーマンショック」、EUの「ギリシア危機」「スペイン危機」そして「イタリア危機」と、EUもおちおち出来ない状況。当然、日本は財政状況は「先進国中で一番悪い」。なにしろ「GDPの200%債務」と言う状況は尋常ではない。これで「円高」「低金利」であるのが不思議に思われる。しかも、状況を好転させる材料が無い…ときている。むしろ、「少子高齢化」「団塊の世代の引退とそれに伴う預貯金の切り崩し&年金支給」で、日本は「自転車操業」と言っても良い状態。でも、相変わらず「世界最大の債権国」だし、「固定資産を含めた国民の資産は、まだ黒字」だけど…。

私見だけど、ある意味(皮肉な見方だけど)「国民が政府を信用していないから、アナウンスメントが逆に取られてるから持っているのかも知れない」と勘繰ったりもする。

「財政の持続可能性」(「財政の持続可能性と財政評価」 参)は本当は「計量経済学的に解く」のが正しい…のだろう。

でも、これでは専門家しか解らないと思う(「知らぬが仏」かも知れないけど…)。

で、これをもう少し解り易くしてみると。例えば、政府の2期間だけの「予算制約」を考えてみる。

1期目:B2=(1+i )B1+G1-T1
2期目:B3=(1+i )B2+G2-T2=0

数式が出てきたら「もう解らん!」と言われそうなので、これを言葉で説明すると、まず「予算制約」と言うのは、家計で言えば「収入と支出」の事。Bは債務(国債)、つまり家計で言えば「借金」。添え字の1や2は「1期目」「2期目」と言う意味。だから、B2と言うのは2期目に抱える「赤字」。iは「利子率」で、普通はiは「名目利子率」rは「実質利子率」を表すのだけど、経済学では良く「単純化」のためにiとrは同じ利率としたりする。で、本当はi=r+πと言う関係がある。このπはインフレ率。だから、デフレだと、πはマイナスだから、普通に「利子が0.1%しかない」と言っても、もしも「3%のデフレ」があると、本当の金利は3.1%も付いているって事になる(反対にインフレだと、「7%の利子が付いている」と思っても、インフレ率が5%あると、本当は「2%しか利子が付いていない!」って事になる。

ここで、B1に(1+i )が掛っているのは、1期目の終わりには当初の借金に利子が掛ってるから、1期目の終わりには元本合わせて(1+i )B1に借金が増えているということ。 そしてG1は、1期目の「政府支出」、T1は1期目の「税収」。

ここで、G1-T1、つまりは政府の支出と収入(税金)が「赤字」だったら、つまりはG1の方が、T1よりも大きければ、「赤字」は当然増える。だから、B2はB1よりも大きくなる。

で、これは「単純化した2期間モデル」だから、2期目はと言うと、同様に考えて、2期目の式が出来る。ただ、2期モデルだから、ここで「借金を清算」しなければならない。だからB3は0にしなければならない。政府と言えども「借りた金は返さなければならない」のだ。

この2式を一つに纏めると、

(T1-G1)+(T2-G2)/(1+i )=(1+i )B1

と言う式が書ける。これは左辺第1項が「第1期の収支」、第2項が「第2期の収支」そして右辺は政府の「当初債務」を表している。今、もしも、T1が50兆円、G1が100兆円、当初の債務が10兆円、そして利子率が2%だとすると、T2-G2は約59兆円でなければならない。ここで、もしも、T2が50兆円(前年度と同じ)だとすると、2期目の政府支出が0(そんな事有るわけないけどね)だとしても、9兆円の不足。つまりは「デフォルト」になる。

これが、更に「多期モデル」になると、同じような「財政」(家計で言うと支出と借金)を繰り返す事によって、B(債務)は「雪だるま式」に増えていく。普通の家だと「信用度」が無いし「お札を刷る」訳にも行かないから、毎日「借金の取り立て」で、「夜逃げ」をしなければならない…だろう。

これを解消するためには最終的にはG(政府支出)を減らすかT(税金)を上げるかしかない。ただ、国家の場合は、家計のようには単純じゃない。だから「増税派」と「反増税派」の論争になる。政治的な面が見え隠れする議論だけど、「増税派」は、まず「財政収支均衡」に持っていきたいのだろうし、将来的に政府支出は減少しないし、経済成長もそれ程見込めない…と考えて居るのかも知れない。一方、「反増税派」は、「増税するにはタイミングが悪すぎる。この不況に増税すれば、ますます消費が冷え込み、不況が悪化する」、やるにしても「景気回復」してからやるべき、経済成長率が上がれば、「増税なき財政再建」は無理だとしても、国民の「負担」は和らぐ(増税率も抑える事が出来る)…と考えて居るのかも知れない。

しかし、「失われた10年」「失われた20年」を経ても、この「世界同時不況」の中、中々「トンネルの出口」が見えない…のが現実。

ところで、

「じゃぁ、何時、破綻が起こるの?」

と言われると、これが実は「はっきりした答えが出ない」…と言うのが本当のところ。

今回のエントリは、ジョーンズの「マクロ経済学Ⅱ」を引用させて貰ったんだけど、その中で、ジョーンズは次のように言ってる。

「予算制約に伴う問題は、インフレの他にも、政府を債務不履行(default)に導く可能性も持っている。債務不履行とは、政府がある債務の返済をしないとか、額面未満の返済しかしないと宣言することである。これは1980年代初めにラテンアメリカの多くの国で起こり、1998年にはロシア、2002年にはアルゼンチンでも起こった。
 このような災難に陥る債務・対GDP比率の臨界点を示すマジックナンバーはない。現実をみてもこの水準は、それぞれの経済の歴史的経験や成長見通し、そしてなによりも政府と中央銀行に対する信頼性に依存するなど、さまざまな要因に左右される。2001年、債務・対GDP比率が65パーセントとなったところでアルゼンチンは危機を迎えたが、大きな問題もなくこの水準を超えた国もある。例えば日本の債務・対GDP比率は1991年の約13パーセントという水準から、2010年には100パーセントを超える水準まで急上昇した。また米国は第2次大戦後の時点でもっと高い債務・対GDP比率であった。だから100パーセントという比率でも必ずしも問題だとはいえない。とはいえ、日本の債務・対GDP比率の上昇は安心していられるものではなく、同じペースの上昇がこの先10年も続けられるとは思えない。」

もう少し、難しい表現では、デビット・ローマー「上級マクロ経済学」で、ローマーは次のように言っている。

「…債務不履行の発生は、自己実現的な思い込みだけでなく、経済の基礎条件にも依存している。とくに、政府が望む借入額の増加、安全利子率の上昇、および潜在的な歳入の分布の下方シフトは、いずれも債務不履行の可能性を高める。こうした変化の各々はπ=(R-R)/R曲線の下方シフト、あるいはπ=F(RD)曲線の上方シフトのいずれかを引き起こす。結果として、そうした変化はすべて安定的な均衡におけるπの値を引き上げる。加えて、そうした動きの各々には、どんな利子倍率を提示しても投資家が債務を保有しようとしない均衡が唯一の均衡になるような状況に経済を移動させる可能性がある。したがって、ここでのモデルの1つのメッセージは債務残高の積み上がり、要求され収益率の高まり、将来の歳入の停滞のいずれもが債務不履行の可能性を高めるということである。」
(ここでのπは「債務不履行の確率」を表す。Rは政府債務の利子倍率、Rは政府債務の保有リスクが無い場合の利得。Dは償還を迎えた政府債務。)

ジョーンズは「このような災難に陥る債務・対GDP比率の臨界点を示すマジックナンバーはない」と言っているが、それを推計しようとしている経済学者さん〔(上記「財政の持続可能性と財政評価」のPolito&Wickens(2007)参〕も居るのだ。

しかし、「それぞれの経済の歴史的経験や成長見通し、そしてなによりも政府と中央銀行に対する信頼性に依存するなど、さまざまな要因に左右される」と言うのは現実で、デフォルトを繰り返すような国は「信用」が薄く、低い債務・対GDP比率でデフォルトを起こす…事は良く知られている。
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現代の閉塞感のある世界がもう少しだけ住みやすくなれば良いなぁ、などと考えております。今の状況の延長線を自分たちの子供たちや孫たちへバトンを渡すのは余りにも無責任だと思っています。大学は工学系卒。国立K大学の経済学研究科大学院修士。博士課程考慮中…。この国の未来への良きシナリオを描きたいと思いトボトボと歩いてるって感じです。ただ最近は、当方の怠慢のせいでtwitterまとめ、或いは「忘備録」化してます…。しかし、同志さんたち大歓迎です。

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